一番星、黒猫、および、僕
Pentax K100D, smc PENTAX-M 1:2.8 28mm
その日、僕は黒猫と一緒に、とぼとぼと日暮れ時の道を歩いていた。
いつもの駐車場をショートカットする道だ。
・・・
「一番星。」
僕は、一番星を見つけて、しばらく立ち止まっていた。
「あんなに近く見えるけど、本当はすっごい遠いところにあるんだぜ。」
黒猫は退屈そうに前足を舐めながらそう言った。
「うん、しってる。」
「宝石と違って掌に載せたりすることもできないんだ。」
「うん、それもしってる。」
「じゃあ、なんでそんなに嬉しそうにしているんだい?」
・・・
黒猫はしばらくじっとしていたけど、駐車場の隣の石垣を駆け上がって垣根の向こうに消えていった。垣根をくぐるとき、ちら、とこちらを見たけど、何も言わずにそのまま帰っていった。
まだ、僕は一人でじっとしていた。
「あんたの人生だ。あんたの好きにするがいいさ。」
黒猫がどこかでそう言ってるような気がした。
・・・
「僕は一番星を見つけたことが嬉しいんだよ。」
僕は、荷物を持って歩き始めることにした。
僕にだってまだできることはあるさ。
君だってそう思うだろう?
僕はダウンのジッパーを一番上まで上げて、急に冷たくなった風が入らないようにして早足で歩いた。
空はどんどん暗くなり、一番星はもっとはっきり見えるようになった。
二番目の星はまだ見えない。
・・・
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