サクラの風の頃に
Nikon D2H, AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G
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道路に面した側の窓を開けた。
ひんやりとした空気が入ってきて、部屋の中の空気が入れ替わるのが分かる。
缶ビールを 3 本開けたところで、彼は僕に言った。
「僕は自分のことを、思いやりのある人間だと思っていた。とんでもない思い上がりだ。『いつかは分かってくれる。その方が相手のため』 だなんて、自分の考えが正しくて相手の考えより優っている、ということが前提だからね。ホント、とんでもない話だよ。」
僕は黙って聞いていた。彼は続けた。
「結局のところ、面倒な悩み事を切り捨てて、自分が幸せになりたいだけなんだよ。僕はそういう人間なんだ。自分の言ったことさえ守れない嘘つきだ。」
彼は立ち上がってシンクのところに行き、胃の内容物を大して辛そうもなく吐き出していた。
「飲んでいようがいまいが、このことを考え始めると吐いてしまう。だから、もう慣れた。」
彼が同情して欲しくて僕に言っているのではないことは分かっていた。
僕は彼に言った。
「そこまで分かっているなら、どうして君はまだ生き続けているのかな。」
彼はシンクに手を突いたまま黙っていた。
僕は続けた。
「生き続けることが何かの罰と思っているなら、もういいんじゃないかな。もう君は充分に罰を受けているよ。」
僕らは黙って、次のビールを冷蔵庫から出して飲んだ。
窓から見える葉桜になったサクラの木が街路灯に照らされている。
少しだけ残った花びらがキラキラと光っていた。
窓から入ってくる風は、少しサクラの匂いがした。
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コメント
>自分の考えが正しくて相手の考えより優っている、ということが前提だからね
参りました・・・すべてお見通しですね・・・私の心の底を。
なんだが「相田みつを」を初めて読んだときのような衝撃でした。ありがとうございます。なんだか今日は素直に慣れそうです。
投稿者: matu | 2007年03月30日 06:50
matu さん:
なんだか恐縮してしまいます。
こんな駄文でそう思っていただいたことを光栄に思います。
ありがとうございます。
投稿者: hirobot | 2007年03月30日 09:54
こんにちは :D
「ご…ごめんなさい」って気持ちになってしまいました。
時々、自分を責めているのか、世界を責めているのか、わからなくなります。
でも、一緒なのかな?
桜の香りがしそうなお写真。
夜桜も風情があっていいですよね。
投稿者: yuki | 2007年03月31日 09:39
yuki さん、こんにちは。
> 「ご…ごめんなさい」って気持ちになってしまいました
す、すみません・・・
なんていうか、その、これはお話なので。
> でも、一緒なのかな
そういわれてみれば、意外とその境はあいまいなのかも知れませんね。
これまで意識していませんでしたが、そうなのかもしれません。
PS
yuki さんの「RECOMMEND」にあった書籍、参考になりました。ありがとうございます (u_u)
こういうところから気をつけないといけませんよね。
投稿者: hirobot | 2007年03月31日 10:57