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2010年01月31日

第8話イラスト出来までお待ちを。電気自動車で食糧危機。など

第8話、お待たせしていてすみません。にもかかわらず、毎日「応援クリック」いただいていてとてもうれしいですし、「期待していただいているんだな」ということが感じられてとても励みになります。ありがとうございます。(続きのちょっと長い話は、↓の 「続きを読む」で。)


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友人にある話をしていたら、「それは絶対ブログに書くべきだよ」と言ってもらえたので書くことにします。
かなり前の話になって恐縮ですが、デトロイトのモーターショーを見ていたときのことです。
韓国の知らないメーカーの電気自動車が展示されていて話題になっていました。
安価で、しかも今年~来年にアメリカで量産工場を作る、ということでした。「聞いたことないメーカーだな」と思っていたら、ゴルフ場のカートを作っている会社でした。

今の内燃機関のエンジンで走る車の部品点数は約3万点。それに対し電気自動車は1万点程度。
しかもモーターもバッテリーも各専門メーカーから調達するだけで作れちゃう。つまり、ゴルフ場のカートを作るのと変わらない、ということ。
今、日本のメーカーの強みは燃費効率の良いエンジン部分。つまり上記でなくなる部品の 3万点-1万点=2万点の部分。
もし、その部分がいらなくなったら、日本車の強みがずいぶん薄れる。

今、輸出の多くが自動車産業に依存してますよね。
もし日本車の輸出が減ったら、当然外貨の稼ぎが減ります。
アメリカと違って、自国の通貨で他国からモノを買えないので(つまり、円建てで輸入できないので)、外貨が減ると、輸入できる量が減ります。
現在、食料自給率40%未満の日本でこの状況が起きると、間違いなく日本国内は食糧危機。
餓死者も現在と比較にならない数が出るでしょう。

「電気自動車はエコ」と能天気に言っている場合じゃないような気もします。



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2010年01月23日

新月前夜、窓、そして君の事。【第 7 話】


文・イラスト: セキヒロタカ
 
 
  ・・・

[前回までのあらすじ]
新月前夜に「その」部屋の明かりが必ず2度明滅することに気付いた僕は、新月前夜になるとベランダから観察していたが、その晩はいつもと違って点いたまま消えなかった。その緑の明かりに暗示めいたものを感じ、翌日「その」ビルに行った僕が見たのは外壁を覆われたビルだった。そこで僕は「静かな朝の天気予報」の女の子に出会い、彼女と「耳たぶ」の契約をする。
    ・・・ 

翌朝起きると、僕は一人でベッドにいた。
彼女の姿を探したが、どうやら出かけたようだった。よほど静かに支度をして出かけたか、僕が熟睡し過ぎていたか、のどちらか、またはその両方だ。
彼女は僕が寒がらないように暖房をつけたままにしてくれていたようだった。
ソファの上には、昨夜僕が脱ぎ散らかしたであろう服と下着がきちんとたたんで置いてあった。僕はそれを見て少し気恥ずかしくなり、服を着ようと起き上がりソファの方に歩いて行った。

ソファの前のローテーブルに置手紙があった。

彼女は郵便局と市役所に行く用事があること、お昼ごはんを買って帰ってくること、オーブントースターに食パンをセットしておいたのでお腹が空いたらトーストして食べてほしいということ、飲み物は冷蔵庫の中の好きなものを飲んでいいし、部屋のものは自由に使っていいということ、出る用事があったらこのスペアキーを使って欲しいということ、が書いてあり、手紙の上に部屋の鍵とオートロックの鍵が置いてあった。

僕は彼女が手紙を書いてくれているところを想像して暖かい気持ちになった。
彼女は僕が知る唯一の左利きの女の子だった。彼女はいつも左手でとても優雅に文字を書いた。空気中に浮かんでいる、まだ形になる前の言葉を、彼女が左手を通して文字にしていく様子は、まるで魔法を見ているようだった。

彼女の手紙を読み終えると、急に空腹感がやってきた。オーブントースターを開けると4枚切りの食パンがセットしてあり、コーヒーメーカーには水と挽いた豆がセットされていた。僕はオーブントースターの「トースト」ボタンを押し、コーヒーメーカーの電源を入れた。

コーヒー豆が暖められた水分を含んでいく匂いで僕の頭は少しずつ働き始めた。
重要なことは早く調べておかないといけない。物事を明らかにするには事態が安定するまでの間が重要だ。端緒から離れれば離れるほど、真実は見えにくくなる。

とりあえず、部屋に戻って今ある情報を整理し、これから調査する必要のある情報を洗い出す必要がある。

僕は、コーヒーとトーストを胃の中に入れ、食器を片付けてから、ローテーブルの上にあったメモパッドからメモを1枚切り取った。そして、用事があるのでいったん自分の部屋に戻るがまたすぐに帰ってくること、僕が合鍵を持ったままなのは良くないと思うから部屋に鍵をかけてからポストに入れておくことを書いた。それを彼女の置手紙のあった場所に置いた。そして、彼女が書いてくれた置手紙をきれいに四つ折にしてポケットに入れた。

  ・・・

僕は部屋に戻り、これまでのこと、彼女から聞いたこと、自分で入手した情報を整理した。自分で入手した情報は無いも同然だった。
あの日、「あの」ビルに来ていたのは、おそらく公安関係者だろう。それなら、これ以上調査するならどうしても公安事案関連の資料が必要になる。

僕は、古くからの友人の前田に連絡を取った。彼は雑誌社に記事を持ち込んでいるフリーのジャーナリストで、警察回りも長く、そこそこパイプも持っている。
携帯電話に掛けると、いつもなかなか電話に出ない奴がすぐに電話口に出た。

「お前、何か妙なこと始めただろう。」

と開口一番、前田は言った。

「どうしてそんなこと知ってるんだ?」

「オレがどれだけこの業界にいると思ってる?無警戒の素人があんな場所で毎日ウロウロしてたら誰だって気付くぞ。それでオレに連絡してきた、ってことだろう?まぁ、どんな用件かはおおよそ見当が付く。少なくともピクニックのお誘いでないことくらいはわかる。」

「それなら話は早い。教えてほしいことがあるんだ。」

「電話は駄目だ。場所を決めて会おう。FAX で送る。FAX の番号を教えてくれ。」

僕が FAX 番号を教えると、「そのままそこで待て」と言って前田は電話を切った。

しばらくすると、FAX で待ち合わせの場所が送られてきた。隣の市の中心から少しだけ歩いた所にあるスターバックスに1時間後、徒歩で来い、というものだった。降りるバス停も指定されていた。FAX の発信元から見るとどうやら、近くのコンビニエンス ストアから送ったようだった。かなりの念の入れようだな、と僕は思った。

僕は早速着替えて(それまで僕は昨日の服のままだったのだ)、隣の市の中心地に向かった。バスを2本乗り換えて、指示されたバス停で降り、スターバックスに向かった。
そのとき、携帯電話が鳴った。前田からだ。

「こちらから、お前の姿が見えるよ。」

「どこにいるんだ?」

「いいか、スターバックスを通り過ぎてすぐの交差点で道を渡れ、向かいの映画館の隣の喫茶店の窓際にいる。」

僕は四車線道路の歩行者信号が青になるのを待って渡った。喫茶店はミニシアターの陰になったところにあった。昔ながらの、という感じの喫茶店だ。
ドアを押して入ると、ドアベルが「からんからん」と鳴った。

右を振り向くと、そこに前田がいた。

僕は表情をなるべく変えないようにして向かいに座り、ダッフルコートを脱いで隣の席に置いた。
注文を取りに来た女の子にホットのブレンド コーヒーを注文してから前を向くと、前田は俯き加減で顔をしかめながらタバコに灯を点け、マッチを振って火を消していた。

「最近マッチがなかなか手に入らなくてねぇ。そのために喫茶店に来ているようなもんだ。」

「スタバにはマッチはないからな。」と言って僕は笑った。

前田はちょっと苦笑いを浮かべたが、真顔に戻って言った。

「俺から言えることは、あまり深入りするんじゃない、ってことくらいだ。」

「いや、深入りしようと思っているわけじゃないんだが、進行中の公安事案を調べる方法はないかなと思ってね。」

そう言って僕がいきさつを話すと、前田は指に持っていたタバコをくわえなおし、諭すような口調で話し始めた。

「警察には捜査情報を保存しているシステムがあるのは聞いたことがあるだろう?内部の人間は“TOP-WAN”と呼んでるが、当然、アレには部外者はアクセスできん。警察内部でも端末で検索できる範囲は階級ごとで限定されてるくらいだからな。政治マターになる可能性のある事案なんて、アクセスできるのはごくごく一部の人間だ。TOP-WAN はクローズドなネットワークで運用されていて、インターネットには接続されていないから、ハックも無理だ。」

前田は少し間を空けてタバコの煙を吐き出し、1/3位残ったタバコを灰皿に押し付けながら続けた。

「警察官はリークがバレたらクビだからな。何の得もないのにリークはせん。特にその手のヤバい事案はな。警察官は退職しても守秘義務が掛けられているからそっちの線も無理だ。事件を担当した弁護士から情報取ろうにも、そもそも立件されていないわけだからな。それも無理だ。」

前田は、タバコの箱を取り出して、トントンとテーブルの端を叩き、また1本タバコを取り出して口にくわえた。マッチ箱を親指と人差し指で挟んで手の中で回しながら、何かを考えているようだった。

「あのビルから運び出されたブツ、どこに送られたと思う?」

タバコに灯を点けないまま前田はそう僕に訊いた。僕は黙って前田の顔を見ていた。

「SPring-8 さ。」

前田はそう言うとタバコに灯を点け、大きく煙を吸って吐いた。

「その後、和光の方に送られたらしい。まぁ、そういう事案ってことだ。」

前田はそう言って、「とにかく気をつけたほうがいい」と言った。

僕たちは残っているコーヒーを一口だけのみ、席を立った。

僕はノー ギャランティーで前田の時間を拘束したことを侘び、そのうち何らかの形で返す、と言った。前田はタバコをくわえたまま、

「この店を出たら、お前は左へ行ってバスに乗れ。」と小声で言った。

僕は、無言で頷き、前田より先に出て左に曲がった。
交差点で信号待ちをしている間、横目で前田を追った。
彼はそのまま右に曲がり喫茶店の奥の路地に入っていった。その間、こちらを見ることはなかった。
 
  ・・・
 
時計を見るともうすでに夕方だった。
僕は慌てて、彼女のマンションに向かった。

オートロック端末のテンキーで部屋番号を入力したが応答がない。電話を掛けてみようと携帯電話を取り出すと電源が切れていた。僕は1日半くらい充電をしてなかったことに気付いた。なんてこった。いつもはこんなヘマはしないのだけど。
合鍵をポストに入れたので、部屋に入っているわけにも行かない。僕は待つしかないのだ。
部屋で待つのもここで待つのも変わりないかと、コーヒーを買って近くの公園に行きしばらく時間を潰すことにし、マンションの正面の階段を下りようと振り返ると、階段の下に彼女がいた。


(つづく)

  ・・・


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2010年01月15日

新月前夜、窓、そして君の事。【第 6 話】


文・イラスト: セキヒロタカ
 
 
  ・・・

[前回までのあらすじ]
新月前夜に「その」部屋の明かりが必ず2度明滅することに気付いた僕は、新月前夜になるとベランダから観察していたが、その晩はいつもと違って点いたまま消えなかった。その緑の明かりに暗示めいたものを感じ、翌日「その」ビルに行った僕が見たのは外壁を覆われたビルだった。そこで僕は「静かな朝の天気予報」の女の子に出会う。
    ・・・ 

僕らはまた自転車を押して、線路と反対側の道を渡ったところにあるスーパーマーケットにおでんの具を買出しに行った。「暖めるだけのおでんパックでいいんじゃない?」という僕の提案はあっけなく彼女に却下され、厚揚げやちくわ麩、がんもどき、といった具材とピノ・ノワールのライトボディの手頃なワインを買って、彼女の部屋に行った。

部屋はマンションの上層階にあった。バルコニーからはさっき僕らがいた公園が見えた。

僕がバルコニーからの景色を眺めている間に、彼女は手際よくおでんの支度をし、ローテーブルにランチョンマットを敷いて食卓をしつらえた。僕は彼女から渡されたワインオープナーでコルクを抜き、グラスに注いだ。

「おでん委員会に乾杯。」

テーブルの上のおでん鍋を突付きながら他愛のない話をしていた僕たちだったが、やはり最後は「あの」部屋の話になった。

「あのビルの壁面工事の始まった日を境に「変な感じ」を感じなくなった、と言ったけど、正確に言うとちょっと違うの。」

彼女はそう言って、続けた。

「あの日は、私は掃除当番で早出だったので、いつもより早くここを出て、会社に行ったのね。」

彼女は少し下を向いて、おでん鍋の乗っているローテーブルの一角をじっと見つめた。

「あの線路沿いの道を歩いていると、とても胸騒ぎがしたの。私、そういうことよくあるのよ。そういうときはきまって何かある。だから、私は少し気を付けていたわ。すると、救急車がサイレンを鳴らしながら横を通り抜けていった。予感がしたので早歩きで向かったの。」

「どこに?」僕が言うと、ちょっと驚いた顔になって彼女は言った。

「もちろん「あの」ビルよ。予感がしたとおりだったわ。「あの」ビルの前に救急車が停まってた。少し時間に余裕があったので、しばらくそこで見てたの。でも、5分位して救急車は誰も乗せずに、サイレンも鳴らさずに行ってしまったの。」

僕は何も言わずに彼女の顔を見ていた。彼女はそれに促されるように、続きを話し始めた。

「それから私は会社に行って、あ、そう、言ってなかったけど、私の会社の事務所はあの店舗の上の階にあるのね、そこのロッカールームに荷物を置いて制服に着替えて、掃除をしに店舗に降りたの。店舗からは高架の下の通る道越しにビルの入り口がちょうど見えるのよ。掃除をしながらビルの前を見ると、今度はパトカーと地味なワゴンが停まってた。気になって仕方なかったので、掃除は後から超特急でやることにしてしばらく見ていたら、1人の男の人がダンボールを重そうに抱えてビルから出てきて、その箱をワゴンに積んで、パトカーと一緒にどこかに行ったの。そのすぐ後、とてもたくさんの工事車両が来たのね。あんな狭い道だからほとんど道路封鎖状態よ。たくさんの作業員の人も来て、あっという間に足場を組んで行ったわ。」

彼女は一気にそこまで話すと、ふぅと息をした。

「それから、「変な感じ」がしなくなった、ってことだね?」

と僕が言うと、彼女は「そう」と短く答えた。

「あの「変な感じ」が救急車やパトカーと関係があるかどうかはわからないけど、ただ、それを境に「変な感じ」はしなくなったの。消えてなくなるみたいに。」

「でも、不思議だな。」僕はそう言って続けた。

「僕もあの日のことが気になって、新聞記事とか警察発表とか色々調べたんだけど、「あの」ビルに関係するような記事や発表は一切なかったんだよ。ひょっとしたら何らかの公安事案だったのかもしれないね。もう少し調べてみる。きっとなにかあるはずだよね。だって、実際に警察が動いているんだから。」

僕はそこまで言ってから、グラスに少しだけ残っていたワインを最後まで飲んだ。

「ごめん、遅くなっちゃったね。帰らなきゃ。君は明日は仕事だよね。」

僕がそういうと、彼女は「明日はお休みなの」と言った。

「こんな遅いし、寒いし、今から自転車は危ないわ。それに、」

彼女は言葉を切って、僕の顔、正確に言うと目の下あたり、をしばらくじっと見つめてから、「耳たぶ。」と言った。

「耳たぶ?」

「うん。耳たぶ。触ってもいい?・・・ですか?」

「うん、いいけど。どうして?」

「これね、ある種の契約なの。」

そう言って彼女は人差し指と中指と親指で僕の耳たぶをそっと挟んだ。

(つづく)

  ・・・


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2010年01月13日

連載第6話イラスト出来次第アップします、最強&最安の暖房器具、など。

連載第6話お待ちの方、仕事がバタバタでイラストが間に合わず、お待たせしてます。すみません。
イラストもうすぐできますので、もうちょっと待っててくださいね。

今日は、昨年末に「開発」し、現在絶賛使用中の最強&最安の暖房器具を紹介します。・・・ (本当にどうでもいい話なので、つづきは↓の「続きを読む」で)


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  ・・・

机の下でネコ飼ってるのではありません。
制作費 0円、超低ランニング コスト、超安全、効果抜群” の僕の手製の最新暖房器具です。

僕の仕事場は机が窓に面していて、夜は冷気が足元にどんどん来て非常に辛い状況でした。これを何とかしたいと「開発」しました(笑)

机の下に見える箱状のものは、引越し用で余ったダンボールに、もらい物の防災グッズの「防寒ブランケット」を敷き、中に湯たんぽを入れています。
これを斜めに傾けて固定し、かつ、足を入れやすくするために、1方向だけ「蓋」側のダンボールの倒しています。

ダンボールはもともと保温性に優れていますが、これにシルバーシートを敷くことで湯たんぽや身体から発せられる輻射熱を外に漏らさないようにしています。

上からかぶせる毛布にも工夫をしています。
本当に寒いとき、ひざ掛け毛布の効果があまりないのは、毛布と足の間にまったく空間がないからです。
空間がないと冷気で冷やされたひざ掛け毛布が直接足を冷やしてしまうのです。
そのため、対策として、机の下から4点で吊り下げる方法を取りました。
もらい物のフリースの内側に、これまたもらい物のシルバーシートのブランケットを重ね、身体や湯たんぽからの輻射熱を閉じ込めています。
また毛布を簡単に取り外せるようにベルクロで机に固定し、毛布側の固定部分は弱い素材のシルバーシートを守るため、ダンボールのベースにベルクロを固定し、そこに紐で毛布とシルバーシートを固定しています。

この暖房器具、暖かいのに、絶対に火事にならない(湯たんぽだからね)。
しかも、低コスト。一回湯たんぽを暖めたら半日持ちます。
窓からの冷気をほぼ完全に遮断するので、コタツ並みに暖かい。
材料費タダだし!

みなさんもいかが?


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2010年01月08日

新月前夜、窓、そして君の事。【第 5 話】


文・イラスト: セキヒロタカ
 

[前回までのあらすじ]
新月前夜、「その」部屋の明かりが必ず2度明滅することに気付いた僕は、新月前夜になるとベランダから観察していたが、その晩はいつもと違って2度明滅することなく点いたままだった。その緑の明かりに暗示めいたものを感じ、翌日「その」ビルに行った僕が見たのは外壁を覆われたビルだった。調査を進める僕はメガネ店の「静かな朝の天気予報」の女の子に出会う。

 
  ・・・ 
 
「ひょっとして、斜向かいのビルのメガネ店の?」

僕はそう言ったが、彼女のことははっきり覚えていたから、「ひょっとして」は本当は不要だった。
彼女は、

「もし違っていたらごめんなさい。でも、もしこのビルの一番上の部屋を見ていたのなら、その理由が訊きたくて。ごめんなさい。」

と2度謝りながら言った。彼女はこの状況を扱いかねているのか、この前の時の静かな感じとは違って少し慌てた話し方になっていた。僕は、

「確かに僕はこのビルの一番上の部屋を見ていました。怪しまれるかもしれないけど、実は僕もはっきりと説明できる理由がないんです。自分の中ではどうしても引っかかることがあるのだけど。」

と正直に話した。なんとなく、彼女も同じようなことで引っかかっているのではないかと感じたからだ。彼女は、本当は今話したいことがあるのだけど、今日はどうしても時間がないからまた話をできる時間を作ってもらえないか、と言った。彼女は電話番号を教えようとしたが、僕は断って僕の連絡先を教えた。それから、基本的にそこで仕事をしていること、いつも僕一人だけだし、そこで寝起きもしているのでいつ電話してもらっても問題ないことを伝えた。彼女は少しだけ笑顔になり、丁寧にお辞儀をして早足で去っていった。

  ・・・

それから僕らは、彼女の仕事が休みの日に「その」ビルから線路沿いに少し行った駅前のドトール・コーヒーで待ち合わせをして話をした。正確には僕らの間でしか共有できない情報を交換した、という感じだ。

やはり、僕の予想通り、僕らは同じ違和感を抱えていた。

僕は、新月の前の夜、僕の部屋から見て三日月の端が「あの」ビルにかかると、最上階の「あの」部屋の明かりが必ず2度明滅することに気付いたこと、新月前夜になると「あの」部屋の窓をベランダから観察していたが、ずっと(少なくとも1年以上は)同じだったこと、それから、「あの」ビルの壁面工事が始まる前夜はいつもと違って2度明滅することなく点いたままだったこと、その明かりの色が鮮やかな緑だったこと、そして次の日突然壁面工事が始まったこと、を彼女に伝えた。

彼女は、自分には見えるが他人には見えないものがあること、それは世間で言うところの「霊感」とは少し違うような気がすること、そのことは誰にも言ったことがないこと、「あの」ビルの最上階の部屋にはずっと「変な感じ」があったこと、そして、その「変な感じ」はあの壁面工事の始まった日を境になくなったこと、を教えてくれた。

僕らはその後も何度か駅前で待ち合わせをしてそのビルに関する情報交換をした。その日も同じようにドトール・コーヒーで待ち合わせをしたのだけど、ドトールの入っている駅前の一角が改装工事に入っていた。そこで僕らは仕方なく線路沿いに自転車を押して、ぶらぶらと歩きながら話をすることにした。
 
線路沿いの道は、ところどころ狭いところや、片側にしか歩道がないところがあった。
僕らは歩道の狭くなっているところは縦になって歩き、広くなると並んで歩いた。夕方の渋滞が始まる時間帯で、長い列になった車のストップランプが行きかう人を赤く照らしていた。
 
僕らは自転車を押して歩きながらいつもとは少し違う話をした。彼女はいろんなことを話してくれた。仕事のこと、会社への往き帰りに出会った人たちのこと、会社の裏の隙間に住む野良猫のこと。
そうやってしばらく歩いていると線路沿いに大きな公園が見えてきたので、暖かい飲み物を買い、少し座って話をすることにした。暗くなってからあまり遠くまで行くのは気が引けたからだ。僕らは暖かいコーヒーとウーロン茶を買って、公園のベンチに腰掛けた。あたりはもうずいぶん暗くなっていた。

「こんな日は、おでんが欲しくなりますね。」

と彼女が言った。

「動議支持。おでんに1票。」

と僕が言うと、彼女は「満場一致。おでん可決ですね」と言って笑い、揃えた膝に手を当て、ちょっと立てたつま先を見ながら「おでん食べませんか?」と言った。

僕は「うん。いいよ。特に晩御飯の当てがあるわけじゃないし」と言って、「屋台でも行く?」と付け加えた。

「私、あそこに住んでいるんです」と彼女は言って、公園の隣のマンションを指差した。

(つづく) 

  ・・・


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2010年01月07日

連載第5話、イラスト出来次第掲載します!


Sigma DP2, SIGMA LENS 24.2mm 1:2.8

連載、週1回ペースでお待たせしております。もうお話は最後までできているのですが、僕は絵心がないのでイラストを描くのにとても時間がかかっています。イラストが出来次第、第5話載せますので、楽しんでいただけたらうれしいです。(この後、近況報告&時事ネタ。↓の「続きを読む」で。)


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  ・・・
 
ここのところ、とても寒かったですが、昨日の昼は太陽が出てきて気温も上がってきたので、昼ごはんの後、ギターを持って近所の公園に行ってきました。
人が多いと、ちょっとギターを弾いたりするのは気が引けますが、この公園はとても広いのに平日の昼間はほとんど人がいないので、快適です。


(ケータイカメラで撮影)

Fendar Telecaster Thinline が繋がっているのは、TASCAM のギタートレーナーです。IN と OUT を曲を聴きながら指定してやると、その間を繰り返し再生してくれるので、音を取ったりフレーズをコピーしたりするのにとても便利です。
音はヘッドホン経由でも、やっぱり屋外でギターを弾くのって気持ちいいですね。

  ・・・

最近、大手銀行系のサラ金のコマーシャルが多いですが、

自分らのギャンブルのツケを金利 0 (ゼロ) の公的資金で救っておいてもらって、サラ金で貸し出すカネがあったら正常な融資をしろ!強欲金融屋どもめ!公的資金は、サラ金で貸し出すためのものでも、国債を積み増しするためのものでもないんだぞ!(怒)

  ・・・

シー・シェパードを「環境保護団体」と呼ぶのはやめよう。連中は単なる「寄付金ゴロ」だ。
人種差別主義者のキリスト教徒の白人は、異教徒の有色人種を痛めつけることになると、どんどんカネを出す。
今、日本が捕鯨をやめて一番困るのは、シー・シェパードだろう。カネ集まらなくなるからね。
一度やめてみたら?笑
  


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2010年01月03日

新月前夜、窓、そして君の事。【第 4 話】


文・イラスト: セキヒロタカ
 

[前回までのあらすじ]
新月前夜、三日月の端がビルにかかると最上階の「その」部屋の明かりが必ず2度明滅することに気付いた僕は、新月前夜になると「その」部屋の窓をベランダから観察していた。しかし、その晩はいつもと違って2度明滅することなく点いたままだった。その緑の明かりが何かの暗示のように思え、翌日「その」ビルに行った僕が見たものは外壁をすっぽりと覆われたビルだった。

 
  ・・・
 
僕は、部屋に帰り、仕事の準備をしながら、やはり「あの」部屋と窓のことを考えていた。仕事の準備をし終えると、僕はまたベランダに出て、足場とメッシュで覆われたあのビルを眺めた。
足場では作業員が壁面工事を進めているようだった。
そのとき、何人かの作業員が「あの」窓のところに集まり、何かをし始めたように見えた。そのビルまでは距離があるし厚いメッシュ越しなのではっきり見えない。
僕は必死で目を凝らしたが何をしているかはよくわからなかった。僕はカメラの望遠レンズなら何か見えるかもしれないと思い、急いで部屋に入ってカメラを持ち出し、ファインダー越しに覗いたが、僕の持っている程度の望遠レンズでは肉眼とほとんど変わらなかった。ただ、作業員が何かを運び出しているように見えた。
僕はなんとか見ようとしたがやはりはっきりは見えなかった。

その後、そのビルは不透明なシートで完全に覆われてしまい。
ビルの壁面はまったく見えなくなってしまった。

  ・・・

それから僕は、雨降り以外はほぼ毎日自転車で「その」ビルの下に行った。毎日のロードワークのコースに組み込んだのだ。
壁面の工事なのになかなかシートと足場は撤去されなかった。正面側の工事の内容を示すボードには、工期が 1ヶ月くらいに亘ることが記されていた。

これまでも何度か入居者の名前を見に行こうかとも考えたのだけど、そのビルはオフィスビルというよりマンションのような形態だったので、うろうろして1Fの入り口近くにいる守衛に不審者と思われてしまうことが心配で見に行っていなかった。
ただ、その日は決心して確かめに行くことにした。

そのビルの入り口は東側にある。つまり、僕の部屋に向いているのだけど、間に高架の線路があって、ビルの出入りの状況は僕の部屋からは見えない。
僕は道を挟んだ向かい側の歩道から、そのビルの入り口を覗いてみた。入ってすぐ左手に入居者のプレートが入るボードがあり、右手にステンレス製の集合ポストがあった。運送屋が直接ドアを開けて、その奥にあるエレベーターを使っているので、オートロックではないようだ。

僕は携帯電話で話をしているフリをしながらしばらく様子を伺った。それから道を渡り、「その」ビルのドアを開けた。
1Fはエレベーターホールと守衛室とポストがあるだけで、小さな蛍光灯以外は明かりもなく、外からの光が主たる光源といった感じだった。
僕は、行き先を探しているフリをしながら、最上階の部屋のプレートを探した。法人住民税対策なのか、ボードにはまばらに行政書士の事務所と個人名が入っているくらいで、ほとんどが白のプレートのままだった。
最上階は10Fだった。1部屋しかプレートを入れる場所がなかったが、その場所は養生テープでふさがれていた。テープの状態から見て比較的最近貼られたようだ。
きっと、「あの」日以降に貼られたんだろう、と僕は思った。

ふと気づくと、守衛室のカーテン越しにガードマンがこちらを気にしているようだった。ここで面倒なことになるのは避けたかった。なにしろ僕はただ「気になって仕方がない」という理由だけで詮索しているわけで、自分の行動をちゃんとした論理で説明できないのだ。

僕は多少わざとらしく、探した宛先がなかった、という残念そうな素振りをして、そそくさとビルの入り口のドアを開けて右に曲がり、自転車を停めておいたビルの南側に行こうとした。
そのとき、後ろから聞き覚えのある声がした。

「あの、すみません。この前、このビルの一番上の部屋を見ていた方ですよね。」

振り返ると、細身のカーゴパンツにパーカーを着た女の子が立っていた。
静かな朝の天気予報の彼女だった。

(つづく)

  ・・・


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作者 “hirobot” について


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