新月前夜、窓、そして君の事。【第 2 話】
文・イラスト: セキヒロタカ
[前回までのあらすじ]
新月の前の夜、三日月の端がビルにかかったときに最上階の「その」部屋の明かりが必ず2度明滅することに気付いた僕は、新月の前夜になると毎月「その」部屋の窓をベランダから観察していた。しかし、その晩はいつもと違っていた。
・・・
その夜もとても寒い冬晴れの日の夜だった。
僕は、細くて白い三日月がビルに近づいてきたことを確認してから、いつものように淹れたてのコーヒーを蓋付きのマグカップに入れ、フード付きのダウンジャケットを着込んでベランダに出た。
初めて「このこと」に気付いた日もこんな寒い日だったな、と思った。
僕は、それが何年前のことだったか僕は思い出そうとしたけど、なぜかどうしても思い出せなかった。
ふと気づくと、もう三日月の端がビルに隠れる寸前だった。
僕はその一瞬を見逃さないように目を凝らしていた。
部屋の明かりが点いた。
いつもと違ったのは、それからだった。
その日は、その明かりは点いたまま消えなかった。
今でも不思議なのだけど、そのとき僕が奇妙に思ったのは、明かりが点いたままになっていることより明かりの色だった。
「今日は緑だ。」
いつもと違う、鮮やかな緑色だった。
じゃあ、いつもは何色だったか、と訊かれると、まったく思い出せない。
モノクロームの夢の中に赤い夕日が現れたとたん、それまでそこに色がなかったことに気付く、そんな感じだ。
そしてその緑の明かりはずっと点いたままだった。
緑の歩行者信号のようだった。
「もう待っていなくていいんだ。行っていいんだ。」
と言っているように思えた。
僕は何か起こりそうな気がしてずっと見ていたのだけど、コーヒーも底をつき、体も冷えてきた。
「きっと、カーテンの色を変えたとか、それだけのことだよ。」
僕はそう思うことにして、部屋に入った。
そして、バスタブに湯を溜めて体を温めてからベッドに入った。
僕はベッドの中でうとうとしながら、明日「あの」ビルに行ってみようと考えていた。
(つづく)
・・・
コメント
話の続きが気になります!
絵も素敵ですね!
第3話が楽しみです。
投稿者: taku | 2009年12月23日 20:50
*** taku さん ***
こんばんは!
読んでいただいてありがとうございます。
話はもう既に全部書ききっていますので、あとはどこで切って出すか、っていうだけです。っていうか、数時間で書ききったくらいの短編ですけど!
オチを期待しないでくださいね!
投稿者: hirobot | 2009年12月23日 22:00
いやあ、僕も翌日、そのビルに行きますよ。
切り絵みたいで好きです。
投稿者: funamyu | 2009年12月25日 19:32
*** funamyu さん ***
いつもながら funamyu さんらしいコメントありがとうございます。
そういうコメント、非常に好きです!
X-Files 的なオチはありませんので、そちらの期待はしないでくださいね!笑
投稿者: hirobot | 2009年12月25日 19:42
こんばんは。
続きが載ってるかな?と思って来てみたら、まだでしたね。
とっても気になります!
投稿者: 穴金 | 2009年12月28日 04:48
*** 穴金 さん ***
コメントありがとうございます!
PSO&山本山忘年会ではお会いできなくて残念です。
プクソニ会場には行ってきましたが、4人でかかってもプクソニ3人分にかないませんでした。
無念です。
あ、それから、このお話、すっごいオチがあるわけではありませんので、何卒ご承知おきくださいませ。
投稿者: hirobot | 2009年12月28日 09:55
読ませていただきました。
応援ポチポチ!
投稿者: アシュトン | 2009年12月29日 16:25
*** アシュトンさん ***
はじめまして。
コメントありがとうございます。
またぜひおこしくださいませ。
投稿者: hirobot | 2009年12月29日 16:50